別府医師会 放談会

開業医のための
AI入門

明日から、安全に、使い始める。

2026年8月24日 / 国立病院機構 別府医療センター 循環器内科 岩永 賢三
カスタム指示をコピーする 体験のお題を見る
初期設定②

カスタム指示テンプレ
― AIへの9つの約束

ChatGPTの「カスタム指示」に貼り付けるだけ。
「___科」を、ご自身の診療科に書き換えてください。

1
下の「コピーする」ボタンを押す文章がまるごとコピーされます
2
ChatGPT → 設定 → パーソナライズ → カスタム指示自分のアイコン(スマホは左上)から「設定」へ
3
入力欄に貼り付けて、「___科」を自分の科に保存すれば完成。ほかの設定は初期のままでOK
カスタム指示に貼り付ける文章
私は___科の開業医です。医学的・臨床的な質問には以下を必ず守ってください。

1. 私が患者の個人情報(氏名・ID・生年月日・住所など)を入力していたら、回答の前に指摘する。
2. 診断や治療方針の最終判断は私が行う前提で、判断材料を整理して提示する。
3. 確信がないことは「わからない」「不確実」と明記し、推測で埋めない。
4. 論文や数値を引用するときは著者・年・誌名を示す。記憶が曖昧なら「要確認」と明示し、存在を断定しない。
5. 情報源を明示する。個人サイトやブログではなく、ガイドライン(日本の学会・主要誌など)またはインパクトファクターの大きい論文誌を優先する。推奨クラス・エビデンスレベルがあれば併記する。
6. 添付資料がある場合、資料に書かれている内容と資料外の一般知識を明確に区別する。
7. Web検索が使える場合は、根拠を確認してから答える。
8. 薬剤名は日本で使える一般名と商品名を併記する。
9. 患者向け文書は中学生でも読める日本語で書く。

雑談や日常的な質問ではこれらを省略し、簡潔に答えてよい。

※ 1番は「うっかり」を減らすための補助輪です。指摘された時点で文章はすでに送信されているので、入力前に自分で確認するのが基本です。

ハンズオン

今日の設定は、2つだけ。

方針は「簡便かつセキュリティ重視」。これ以外は初期設定のままで大丈夫です。

① 学習させない設定
オプトアウト ― 今日いちばんのお土産

1
Web版ChatGPTを開くchatgpt.com にログイン(項目が全部見えて迷いにくい)
2
⚙️ 設定自分のアイコンの中(スマホは左上、PCは右上)
3
「データ コントロール」設定メニューの中
4
すべての項目をOFF「モデルを改善する」・音声なども全部。これで入力が学習に使われません

Plusなどの有料版でも初期設定はON。自動でオフなのは法人契約だけ。有料版にしてもこの設定は必要です。

特に気になる相談は「一時チャット」で。履歴にも学習にも残りません。

② 自分の流儀を覚えさせる
カスタム指示 ― 上のテンプレを貼る

1
設定 → パーソナライズさっきと同じ「設定」の中
2
「カスタム指示」を開くChatGPTへの“申し送り”を書く欄
3
テンプレを貼り付けこのページの「コピーする」ボタンで
4
「___科」を自分の科にこれだけで完成

テンプレへ戻る

ChatGPTの基本操作
― 覚えるのは4つだけ

✏️

新しい会話を始める

鉛筆マークをタップ

🕘

過去の会話を見る

履歴からいつでも再開できる

🎙

声で入力する

マイクを押して話すだけ

📷

写真・ファイルを渡す

+ボタンから撮影・添付

迷ったら「使い方を教えて」と打てばOK。AI本人が教えてくれます。

ハンズオン

お題集 ― そのまま貼って試せます

各行の「コピー」→ ChatGPTに貼り付け。
答えが返ってきたら「もっと短く」「別の案も」と追いかけてみてください。

🍻
医師会の懇親会の締めの挨拶を、笑いを1つ入れて1分で作ってください。
(ご自分の趣味)が上達する練習メニューを、平日30分でできる範囲で作ってください。
🍜
東京から来た友人を大分の美味しいものでもてなす半日プランを作ってください。
📷
(今日のお店のメニューを撮影して)おすすめの組み合わせは?写真を渡す体験。+ボタンから撮影
💊
血圧の薬を自己中断しがちな患者さんへの声かけを、3パターン作ってください。
📋
うちのクリニックの求人票の下書きを作ってください。(条件は架空でOK。職種・勤務時間・給与などを自由に指定)
☎️
クリニックのスタッフ向けに「電話対応のコツ」の研修メモを、A4一枚にまとめてください。
🔎
PubMedで(ご自分の専門領域のテーマ)の最新の知見を探して簡単にまとめて、PMIDとリンク付きで。公式の連携機能はありません。Web検索に「PubMedで」と指定するだけ。返ってきたらPMIDのリンクを自分で開いて確かめる
🫀
あなたは循環器内科の医師です。80歳の患者さんに、心房細動という不整脈と、血をサラサラにする薬を飲み続ける理由を、やさしい言葉で説明する文書を作ってください。A4半分、見出し付きで。実演①:続けて「もっと短く」「ふりがなを付けて」「最後に安心の一言を」
🩸
あなたは糖尿病の専門医です。初めてHbA1c 7.5と言われた50代男性の患者さん向けに、生活で今日から変えられることを5つ、それぞれ2行で。実演②:「糖尿病について教えて」との違いを見比べる

リマインド:患者さん・スタッフの実名や実データは入れない。年齢・数値をぼかした架空の設定に置き換えてください。

プロンプトのコツ

頼み方のコツは、3つだけ。

覚えるのは「役割・背景・形式」。うまく書けなければ「どう聞けばいい?」とAI本人に相談してもOK。

1

役割を与える

「あなたは循環器内科の医師です」
立場で答えが変わる

2

背景と条件を伝える

誰に・何のために・字数や制約
新人秘書への説明と同じ

3

形式を指定する

「箇条書きで」「表で」「A4一枚で」
仕上がりの形を注文する

+ 一発で完璧を求めない。「もっと短く」「やさしく」「表にまとめて」と会話で追い込むのがチャット型の本領です。

ウソを見抜く
― 出典を確認する3ステップ

① 出典を聞き返す

「その根拠を教えて」と続けて聞くだけ

② 検索機能を使う

検索付きで答えさせると出典リンクが付く

③ リンクを自分で開く

最後は原典で確認。ここは省略しない

「もっともらしい出典」まで作り話のことがあります。リンクを開いて中身を確かめてから信用する。

セキュリティ

患者情報・個人情報は、
AIに入力しない。

これさえ守れば、AIは安心して使える道具になります。

○ 入力してよい

  • 一般的な医学知識の質問
  • 架空の事例・架空の数値
  • 自分が書いた文章の下書き・添削
  • 公開情報(論文・ガイドライン)

✕ 入力してはダメ

  • カルテ本文のコピペ
  • 実際の検査結果・画像・紹介状
  • 氏名・生年月日・住所・連絡先
  • 患者・スタッフの個人情報すべて

「名前を消せば大丈夫」は落とし穴。「80代女性・◯◯町在住・元教師・珍しい病気で入院歴あり」― 組み合わせだけで誰か分かります。

それでも書類仕事をAIに任せたいとき(私見):渡す表は氏名・生年月日・住所を外し、ID・年齢・検査値だけにする → AIは【ID】宛の文書を作る → 名前は院内で差し込む。AIに名前は一度も渡さない。IDにしても院内に対応表がある限り法律上は個人情報のままなので、学習オフ+院内ルールとセットで。実名を扱うなら法人契約+契約書の世界(顧問・ベンダーに相談)。

電子カルテのPCとAI ― 3つの約束

🚫
カルテ画面を渡さないコピペ・スクショを貼らない
📱
端末を分けるAIはスマホか別のPCで
🧩
拡張機能を入れない画面を読み取るものがある

Agent型AI(ChatGPT Workのデスクトップ版など、PCのファイルを扱えるもの)は、電子カルテにアクセスするPCには入れない。

そのまま使える院内ルール 3か条

1
個人情報はAIに入力しない
2
AIの文章は責任者が確認する
3
使ってよいAIは院長が決める

一番怖いのは「うっかりミス」。禁止ではなく「決めて使う」。周知は朝礼で1回話すだけでも効きます。

いちばん大事な原則 ― AIの答えを、そのまま診療判断に使わない。

○ 任せてよい:下書き・要約・翻訳・言い回しの改善 / ✕ 任せない:診断の確定・処方の決定・患者さんへ渡す前の最終チェック
AIはあくまで道具。責任を取るのは人間(使った人)です。

用語集

AIのことば、30個。

講座に出てきた言葉と、知っておくと困らない基本の言葉。専門用語はなるべく避けて説明しています。

生成AIGenerative AI

文章・画像・音声などを新しく作り出すAIの総称。ChatGPTもこの仲間。「調べる」より「作る」が得意。

大規模言語モデルLLM

生成AIの頭脳にあたる部分。膨大な文章を読んで「次に来る言葉」を予測する仕組みで、ChatGPT・Claude・Geminiの中身はすべてこれ。

チャット型AI

LINEのように文章を打つと文章で答えてくれるAI。講座では「聞くAI」。渡るのは自分が打った・貼った・添付したものだけ。

Agent型AIエージェント

頼むと自分でファイルを開き、調べ、作り、確認まで進める「働くAI」。許可した範囲でPCを実際に操作できるため、電子カルテのPCには入れない。

クラウド

AIの本体はインターネットの向こう側(よその会社のコンピュータ)で動いている、ということ。だから通信が要り、入力した内容はその会社に届く。

ローカルLLM

データを外に出さず、自分のPCや院内だけで動かすAI。方向性は正しい「未来の技術」だが、今は専門家マター。自院でのDIYはまだ早い。

学習(トレーニング)

AIを賢くするために大量の文章を読み込ませること。無料版の初期設定では、自分の入力が「教材」として使われることがある

マルチモーダル

文章だけでなく写真・音声・PDFなどもまとめて扱えること。「メニューを撮影しておすすめを聞く」ができるのはこのおかげ。

プロンプトprompt

AIへの頼み方・指示文のこと。コツは「役割・背景・形式」の3つを入れること。一発で完璧を求めず、会話で追い込む。

カスタム指示Custom Instructions

ChatGPTへの「申し送り」を書いておく設定。毎回書かなくても、自分の流儀(このページのテンプレ)を守って答えてくれる。

一時チャットTemporary Chat

履歴に残らず、学習にも使われないモード。特に気になる相談はこれで。

プラグイン旧 コネクタ/アプリ

ChatGPTに外部サービスをつなぐ仕組み。2026年7月に「プラグイン」へ統合(設定→プラグイン)。PubMedの公式プラグインは今のところ無い。論文検索はWeb検索に「PubMedで」と指定すればOK。

Web検索機能

AIがインターネットを検索してから答える機能。出典リンク付きの答えになるので、ウソを見抜く手がかりになる。最後はリンクを自分で開く。

Gemini Notebook旧 NotebookLM

渡した資料の中だけで答えるGoogleのAI(無料)。答えに出典が付く。入れてよいのは個人情報を含まない資料だけ。

ブラウザ拡張機能

ブラウザに後付けする小さなソフト。AI系の拡張機能には画面を読み取る権限を持つものがあるため、電子カルテのPCには入れない。

無料版・有料版Free / Plus

ChatGPTの無料版でも今日の設定はすべて可能。有料版(月20ドル前後)は最新モデル・回数制限の緩和などが主な違い。有料版でも学習オフの設定は必要。まず無料版で1か月試してから。

ハルシネーションhallucination/幻覚

AIがもっともらしいウソを自信満々に言うこと。存在しない論文を引用したり、数値をしれっと間違えたりする。下書きはAI、最終チェックは人間。

プロンプトインジェクションprompt injection

AIが読む文章(メール・ファイル・Webページ)に悪意ある指示を仕込み、AIを乗っ取る手口。いわば「AIへの振り込め詐欺」。出どころ不明のものをAgentに読ませない。

オプトアウトopt-out

「使わないでください」と自分で申し出ること。ChatGPTでは設定→データコントロールの項目をすべてオフにすると、入力が学習に使われなくなる。有料版(Plus)でも初期設定はON。自動でオフなのは法人契約だけ。

個人情報・個人データ

氏名・ID・生年月日・住所など、その人を特定できる情報。名前を消しても「組み合わせ」で特定され得る。患者さん・スタッフの情報はAIに入力しない。

非識別化(匿名化)de-identification

氏名・ID・日付・施設名を消し、年齢を「70代」に丸めるなど、誰のことか分からなくする処理。実データを扱う例外的な場面での最低条件の一つ。

セキュリティ

情報を守ること。講座の大原則は「患者情報・個人情報はAIに入力しない」「電カルPCとAIの端末を分ける」「使ってよいAIは院長が決める」。

Human-in-the-loopヒューマン・イン・ザ・ループ

AIの判断に必ず人が関わる仕組み。日本医師会の答申でも強調されている。「AIは提案まで、確定は医師」

ディスキリングdeskilling

AIに任せるほど自分の腕が鈍る現象。AIを使いつつ、自分で考える習慣を手放さない。

ChatGPTOpenAI

利用者世界一の万能型。情報・ノウハウが豊富でアプリが使いやすい。講座の主役。

ClaudeAnthropic

文章が自然で、長文読解・日本語文書が丁寧。作業を任せるAgent的な用途にも強い。講師が普段使っているのはこれ。

GeminiGoogle

Google検索・Gmail・カレンダーと連携。最新情報に強く、無料で使える範囲が広め。

ChatGPT WorkOpenAI

2026年7月にChatGPTに加わった「成果物を作る」Agent機能。文書・表・Webアプリを作る。講座の実例「ミニアプリ」「書類仕事」はこれで作成。Chat=答えが欲しい/Work=成果物が欲しい/Codex=プログラムを直したい、の使い分け。デスクトップ版はPCのファイルも扱えるので、電カルPCには入れない。

PubMedパブメド

米国国立医学図書館の医学論文データベース。ChatGPTのWeb検索に「PubMedで」と指定すると、PMIDとリンク付きで探せる。最後はリンクを自分で開いて確かめる。

AI秘書

講師が自作した例。メール巡回・下書き作成・情報収集などをAgent型AIに任せ、LINEで結果を受け取る仕組み。

見つかりませんでした

おわりに

今日から始める、3つだけ。

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今日もう済ませました

🔒

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院内ルールを決める

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使ってみる

文書仕事を1つ任せる

AIは、先生の代わりではありません。
ただの便利な道具です。

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